雇用保険の求職者給付 「基本手当(失業給付)」 |
<目 次>
一定期間雇用保険に加入していた労働者が失業した場合、その後、求職活動を行っているしばらくの間、公共職業安定所(ハローワーク)から毎月一定額の給付金が支給されます。これを「基本手当(失業給付)」といいます。
雇用保険による給付の中でも最もよく知られているもので、以前は失業手当と呼ばれていました(※雇用保険も失業保険という名称でした)。
ただし、失業した者なら誰でも無条件に受給できるわけではなく、受給資格を得るには一定の要件を満たしている必要があります。また、支給額や支給される日数も一律ではなく、失業に至った理由や失業前に貰っていた賃金額などによって変わります。
基本手当を受給資格を得るためには、以下の2つの要件を両方満たす必要があります。
退職(失業)した日より前の2年間に、雇用保険に加入していた(被保険者だった)期間が合計で1年以上必要です。
ただし、会社の都合によって失業した「特定受給資格者」の場合は、退職(失業)した日より前の1年間に、雇用保険の被保険者であった期間が合計で6ヶ月以上ある場合でも要件を満たします。
※2年や1年の算定期間内に転職した場合、原則としてそれぞれの勤務先での雇用保険の加入期間を合算できます。ただし、再就職する前にハローワークに離職票を提出して雇用保険(基本手当)の受給資格の決定を受けていた場合は、それ以降から起算します。
加入期間の確認と判定は、勤務先から提供される情報などを元にハローワークが行います。
在職中に自分で確認したいなら、会社の経理担当者に直接確認するか、毎月の給与明細から雇用保険料が天引きされているか確認したり、ハローワークで照会手続きを行うという方法もあります。雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票という書類を提出することで回答書をもらえます。
失業後であれば、退職後に会社から送付される雇用保険被保険者離職票(離職票)も参考になります。
退職理由が会社都合か自己都合かについては、ハローワークに提出する離職票に記載された内容からハローワークの担当者が判断します。その際、簡単な聴き取りもされます。
退職理由は会社が記載するため、場合によっては会社と退職者とで退職理由の認識が異なる場合もあります。そういった場合は自分の見解を詳しく説明したり、退職理由の証明に役立つ書類などを持参すると自分の意見が採用されやすくなります。
基本手当を受給するには、現在失業状態にあって、すぐにでも求職活動を行って働きたいという積極的な意思があることが前提です。以下のように働く意思はあるが諸事情により今すぐには働くことができないケースでは基本手当は受給できません。
こうした制限があるのは、失業保険は本来やむを得ない事情で失業し、働きたいのに働けない人を助けるための制度であるためです。
"働く意思"は、実際に行動で示さなければなりません。具体的には公共職業安定所(ハローワーク)等を通じて、「求職活動」と認められる活動を継続して行っていく必要があります。
ハローワークでは原則として4週間(28日)に1度、失業状態にあることを確認する「失業の認定」が行われます。
具体的には、指定された日にハローワークに行き、「失業認定申告書」に求職活動の状況等を記入し、「雇用保険受給資格者証」とともに提出します。
失業認定申告書の内容などから、現在も失業状態にあり、4週間の間に規定の回数以上の求職活動が行われたことが確認されれば基本手当が支給されます。よって基本手当は失業の認定に合わせて4週間ごとに支給されることになります。
中身のあるしっかりとした求職活動でなければ、基本手当の受給に必要な求職活動とは認定されません。
例えばハローワークで求人の閲覧のみを行ったり、単なる知人への紹介依頼だけでは求職活動とはみなされません。
求職活動と認定されるのは以下のようなケースです。
基本手当を受けるためには、失業認定日までの4週間の間に原則として2回以上求職活動を行う必要があります。
※雇用保険(基本手当)の受給資格を得た後の最初の認定日だけは1回以上の求職活動で済みます。よって受給説明会に出席するだけで回数の条件を満たします。
※自己都合で退職した場合、失業後のおよそ3か月間は基本手当が支給されません(離職理由による給付制限)。この場合は3ヶ月経った後の失業認定日までの期間に原則として3回以上の求職活動が必要となります。
※就職困難者の場合は、4週間の間に必要な求職活動の回数は1回以上で済みます。
基本手当の支給額は、「失業直前の勤務先でどのくらいの賃金をもらっていたか」によって決まります。
具体的には失業直前の6ヶ月間の給与合計によってです。
結論から言うと、毎月支給される基本手当の金額は、失業直前半年間の平均月収の50〜80%となります。
失業直前半年の平均月給 | 月々の基本手当 |
---|---|
69,000円〜138,000円 | 平均月給の80% |
138,000円〜349,000円 | 50〜80% |
349,000円以上 | 50%(上限あり) |
退職前の賃金が高いほど基本手当も多くなりますが、賃金が低いほど給付率は高く設定されているため、給付額に大きな格差が生じない仕組みになっています。
また給付額には上限が設定されています。失業時の年齢によって変わりますが、概ね18〜22万円程度です。
より詳細な計算方法、具体例、対象となる給与の種類などについては別項で詳しく解説しています。
基本手当を受けられる日数・期間を表す指標には「所定給付日数」と「受給期間」の2つがあります。
合計で最大何日分の基本手当をもらえるかを指します。
所定給付日数は雇用保険に加入していた日数、失業時の年齢、失業に至った理由などによって決定され、90日〜360日の範囲で決まります。
雇用保険の加入日数が長かったり、高齢者であるほど所定給付日数も長くなります。また、会社が倒産したり、会社の都合で解雇されたり、深刻な家庭の事情や心身の障害など、やむを得ない事情で失業した場合は長くなり、自己都合で退職した場合などは短くなります。
詳細は別項で解説しています。
基本手当の受給資格の有効期限のことです。基本手当をもらう権利を行使できる期間といってもいいでしょう。
基本手当の受給期間は、原則として失業した日の翌日から1年間です。
※所定給付日数が多い人は受給期間もやや長くなります。給付日数330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日です。
所定給付日数が残っていても、受給期間を過ぎてしまうと基本手当は受けられなくなります。
毎月求職活動を続け、毎月基本手当を受給していれば、所定給付日数を残したまま受給期間を過ぎてしまうことはありません。しかし、求職活動を行わなかったり、失業認定の手続きを行わないなどして基本手当を受給しなければ、所定給付日数も減りません。そうして基本手当を受給しない月が多くなると、所定給付日数を残したまま期限を迎えてしまうケースも出てきます。
なかなか就職が決まらないなかで求職活動を継続していくのは大変ですが、期限を忘れてせっかくの受給権利を放棄してしまわないよう注意しましょう。
<受給期間の延長>
1年間の受給期間中にやむを得ない理由により求職活動や就職ができなくなった場合は、定められた期間内に所定の手続きを行うことで受給期間を最長で3年間延長することができます。延長が認められるのは以下のようなケースです。
会社の倒産や解雇などのやむを得ない理由で失業した場合は、受給資格が決定した日から7日間の待期期間を経た日が給付開始日となり、そのおよそ1ヶ月後に初回分の基本手当が振り込まれます。しかし、自己都合で退職した場合は7日間の待期期間後に更に3ヶ月間の給付制限があるため、その分、基本手当の初回支給日も遅くなります。
詳細は「給付開始から終了まで」を参照してください。
失業してから実際に基本手当を受給するまでの流れを示します。
退職(失業)後に初めにすることは「求職の申込み」です。最寄の公共職業安定所(ハローワーク)に行き、求職申込みをしましょう。
求職申込みが完了すると「ハローワークカード」が発行されます。カードはハローワークで求職活動や相談をする際に提示する必要があるため、毎回忘れずに持参しましょう。
求職の申込み自体は失業者でなくともできますので、退職することが決まった時点で早めに申込みに行って、どんな仕事があるのか調べてみるのもよいでしょう。
<注意!>
失業日以降に求職の申込みをする場合は出来るだけ速やかに手続きを行いましょう。
というのも基本手当の受給資格は失業日のおよそ1年後に消滅するためです(受給期間)。手当をもらえる日数(所定給付日数)が短い人はあまり影響ありませんが、日数が多い人の場合は本来もらえるはずの手当を残したまま期限を迎える可能性もあります。
「雇用保険被保険者離職票(離職票)」は離職前の給与額や退職理由などが記載された書類です。
退職後10日以内に会社がハローワークで離職票の発行手続きを行い、その後、会社から退職者へと送付されるため、手元に届くまでに1〜2週間はかかると見ておきましょう。
離職票が届いたら他の必要物も添えてハローワークに提出します。以下のものを持参しましょう。
ハローワークは提出された離職票の情報を元にして、雇用保険(基本手当)の受給資格があるかを判定します。特に離職理由は支給の時期や期間に関わる情報であるため簡単な聞き取りも行われます。
離職の理由によって基本手当が受給できなくなることはありませんが、自己都合による退職だと受給日数が減ったり、受給開始日が送れるといったデメリットがあります。
退職理由は会社が離職票に記入した内容からハローワークの担当者が判断します。場合によっては会社と退職者とで退職理由の認識が異なる場合もあります。そういった場合は自分の見解を詳しく説明したり、退職理由の証明に役立つ書類などを持参すると自分の意見が採用されやすくなります。
無事に受給資格が決定すれば受給説明会の日時が伝えられ、「雇用保険受給資格者のしおり」が渡されます。
※手続きの順序としては、求職申込みをしてから離職票を提出する流れになりますが、何度もハローワークに足を運びたくないなら同日にまとめて行ってもかまいません。その分、手続きに時間がかかります。
受給資格決定の1〜3週間後に開催される受給説明会に出席します。
※都合がつかない時は事前に連絡すれば別の日に変更できます。
説明会では雇用保険の受給について重要な事項の説明を行いますので、説明をよく聞いて制度を十分理解しましょう。また、「雇用保険受給資格者証」、「失業認定申告書」が配布され、第一回目の「失業認定日」が知らされます。
<説明会は「求職活動」に数えられる>
基本手当を受けるためには失業認定日までに規定の回数の求職活動を行う必要があります。受給説明会への出席も求職活動の一つとしてカウントされます。
「受給条件」の項で解説したとおり、4週間の間に原則として2回以上の求職活動を行います。
失業認定日に「現在も失業状態にあること」及び「2回以上の求職活動の実績があること」が確認されれば基本手当が支給されます。
規定回数以上の求職活動を行い、失業認定日に現在も失業状態であることが認定されれば、認定日から通常5営業日後に指定した金融機関の預金口座に基本手当が振り込まれます。
※休祝日や年末年始(12月29日〜1月3日)を含む場合は遅れることがあります。