特定受給資格者・特定理由離職者とは
雇用保険による給付の一つ「基本手当(失業手当)」は、失業後の求職活動中に一定期間給付金が支給されるものです。
手当を受給できる日数「所定給付日数」の決定基準の一つに「失業に至った理由」があり、自己都合による退職では日数が短めになり、止むを得ない理由で退職した者は「特定受給資格者」や「特定理由離職者」と呼ばれ、給付日数が長めになります。
具体的にどういったケースが該当するのか解説します。
<目 次>
- 特定受給資格者について
- 特定理由離職者について
- 所定給付日数の一覧表
1.特定受給資格者について
特定受給資格者に該当するのは以下のような理由で失業した人です。
- 会社が倒産
- 事業所の移転により通勤することが難しくなった
- 会社に解雇された
※無断欠勤などの雇用契約に反する行為を行ったり、会社に多大な損害を与えるなど、従業員の側に非があって解雇されたケースは除く
より詳しく解説すると以下のようになります。
◆特定受給資格者の範囲
「倒産」等により離職した者
- 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等) に伴い離職した者
- 事業所において大量雇用変動の場合 (1か月に30人以上の離職を予定) の届出が されたため離職した者(※)及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が 離職したため離職した者
※事業所において、30人以上の離職者が生じることが予定されている場合は、再就職援助計画の作成義務があり、再就職援助計画の申請をした場合も、当該基準に該当します。
また、事業所で30人以上の離職者がいないため、再就職援助計画の作成義務がない場合でも、事業所が事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる者に関し、再就職援助計画を作成・提出し、公共職業安定所長の認定を受けた場合、大量雇用変動の届出がされたこととなるため、当該基準に該当します。 - 事業所の廃止 (事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
- 事業所の移転により、 通勤することが困難となったため離職した者
「解雇」等により離職した者
- 解雇 (自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
- 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
- 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2か月以上となったこと、又は離職の直前6か月の間のいずれかに3か月あったこと等により離職した者
- 賃金が、 当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した (又は低下することとなった) ため離職した者 (当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
- 離職の直前6か月間のうちに[1]いずれか連続する3か月で45時間、[2]いずれか1か月で100時間、又は[3]いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
- 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行って いないため離職した者
- 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上 引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないことと なったことにより離職した者
- 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記(7)に該当する場合を除く。)
- 上司、 同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者及び事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の措置を講じなかったことにより離職した者
- 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者 (従来から恒常的に設けられている 「早期退職優遇制度」 等に応募して離職した場合は、 これに該当しない。)
- 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
- 事業所の業務が法令に違反したため離職した者
2.特定理由離職者について
特定理由離職者に該当するのは以下のような理由で失業した人です。
- 派遣労働者など期間を定めて雇用される者が、契約期間が終了した後に契約更新を希望したものの、合意が成立せずに離職に至った
→ただし、以下のような場合は前述した「特定受給資格者」になります。
- 契約の更新が3年以上続いた後に更新されずに離職した
- 契約が更新されることが事前に明示されていたにも関わらず、更新されないことになって離職した
- 心身の障害、身体機能の低下、ケガや病気などの理由で自己都合により退職した
- 親族の看護や介護のために自己都合により退職した
- 妊娠、出産、育児等の理由で自己都合により退職し、その後、基本手当の受給期間延長の措置を受けた
- やむを得ない理由によって引っ越しや転勤が発生し、その結果通勤が困難になって退職した
より詳しく解説すると以下のようになります。
◆特定理由離職者の範囲
- 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者
※その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。前述した「特定受給資格者の範囲」の7または8に該当する場合は除く。(※補足1)
- 以下の正当な理由のある自己都合により離職した者(※補足2)
- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
- 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
- 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
- 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
- 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
- 結婚に伴う住所の変更
- 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
- 事業所の通勤困難な地への移転
- 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
- 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
- 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
- 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
- その他、前述した「特定受給資格者の範囲」の10に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等
※補足1
労働契約において、契約更新条項が「契約の更新をする場合がある」とされている場合など、契約の更新について明示はあるが契約更新の確認まではない場合がこの基準に該当します。
※補足2
給付制限を行う場合の「正当な理由」に係る認定基準と同様に判断されます。
3.所定給付日数の一覧表
1.「特定受給資格者」または「特定理由離職者」
失業時の 年齢 | 雇用保険の加入期間 |
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半年以上 1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
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30〜34歳 | 180日 | 210日 | 240日 |
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35〜44歳 | 240日 | 270日 |
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45〜59歳 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
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60〜64歳 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
2.自己都合で退職した「一般離職者」
失業時の 年齢 | 雇用保険の加入期間 |
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1年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
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全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
3.就職困難者
失業時の 年齢 | 雇用保険の加入期間 |
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半年以上1年未満 | 1年以上 |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
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45〜64歳 | 360日 |