雇用保険給付の一つ「基本手当(失業手当・失業保険)」が給付される日数・期間 |
基本手当(失業給付)は雇用保険による給付の一つです。失業後の求職活動中に一定期間給付金が支給されるもので、以前は失業手当と呼ばれていました。
給付日数は何によって決まるのか、実際に給付を受けられる期間はどのくらいか解説します。
<目 次>
基本手当を受けられる日数・期間を表す指標には「所定給付日数」と「受給期間」の2つがあります。
合計で最大何日分の基本手当をもらえるかを指します。
最短で90日、最長で360日分の給付が受けられます。給付日数の決定方法については後述します。
所定給付日数の有効期限のことです。基本手当をもらう権利を行使できる期間といってもいいでしょう。
所定給付日数が何日分か残っていたとしても、受給期間を過ぎてしまうと基本手当は受けられなくなります。
基本手当の受給期間は、原則として失業した日の翌日から1年間です。
※所定給付日数が多い人は受給期間もやや長くなります。給付日数330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日です。
所定給付日数が残っていても、受給期間を過ぎてしまうと基本手当は受けられなくなります。
毎月求職活動を続け、毎月基本手当を受給していれば、所定給付日数を残したまま受給期間を過ぎてしまうことはありません。しかし、求職活動を行わなかったり、失業認定の手続きを行わないなどして基本手当を受給しなければ、所定給付日数も減りません。そうして基本手当を受給しない月が多くなると、所定給付日数を残したまま期限を迎えてしまうケースも出てきます。
なかなか就職が決まらないなかで求職活動を継続していくのは大変ですが、期限を忘れてせっかくの受給権利を放棄してしまわないよう注意しましょう。
<受給期間の延長>
1年間の受給期間中にやむを得ない理由により求職活動や就職ができなくなった場合は、定められた期間内に所定の手続きを行うことで受給期間を最長で3年間延長することができます。延長が認められるのは以下のようなケースです。
所定給付日数、つまり、「基本手当が合計で何日分まで支給されるか」は誰でも同じわけではありません。給付日数を決定するための基準がいくつかあります。
所定給付日数はこの4つの要因によって決定され、90日(3ヶ月分)〜360日(およそ1年分)の範囲で決まります。
基本的に失業前に雇用保険に加入していた(被保険者だった)日数が長いほど、また、失業した日において高齢であるほど、所定給付日数も長くなります。
雇用保険の被保険者だった)期間のことを「算定基礎期間」といいます。
再就職や転職などで複数の会社で働いていた場合は、会社を辞めるなどして雇用保険に未加入だった期間が1年未満であり、かつ、その期間に基本手当を受給していなければ、それぞれの会社における雇用保険の加入期間を合算します。未加入期間が1年以上だったり、一度基本手当を受給した場合は、算定基礎期間はリセットされてゼロになります。
<ケース1>
大学卒業後、会社で10年働き、その後失業した。
→算定基礎期間は「10年」
<ケース2>
大学卒業後、会社で3年働き、その後失業。基本手当は受給せずに求職活動し、半年後に再就職。2年働いた後に再び失業した。
→途中の失業期間が1年未満であり、その間に基本手当を受給していないため、2つの勤務先の雇用保険加入期間を合算し、算定基礎期間は「3年+2年=5年」
<ケース3>
大学卒業後、会社で5年働き、その後失業。基本手当は受給せずに求職活動し、1年半後に再就職。1年働いた後に再び失業した。
→途中の失業期間が1年以上であるため、最初の会社の加入期間は合算できず。よって算定基礎期間は「1年」
※これらの例では雇用期間中はずっと雇用保険の被保険者だったと仮定しています。
失業理由については、「自己都合」による退職か、それとも「やむを得ない事情」によるものかで大きく分けられます。
自己都合によって退職した人は「一般離職者」、やむを得ない理由で退職した人は「特定受給資格者」や「特定理由離職者」と呼ばれ、手当の給付水準が異なります。後者の方が所定給付日数が長くなります。
※自己都合の場合、所定給付日数が短くなるだけでなく、基本手当の支給開始日が通常より3ヶ月遅くなります(給付制限)。
自己都合とは、転職を希望しての退職や、仕事をしたくなくなった・嫌になった等のケースが考えられますが、判断が難しいケースも多いため、次に説明する特定受給資格者・特定理由離職者の条件に該当しない場合は自己都合と判断すると分かりやすいでしょう。
以下のような理由で失業した場合、特定受給資格者に該当します。
会社による解雇は、無断欠勤などの雇用契約に反する行為を行ったり、会社に多大な損害を与えるなど、従業員の側に非があって解雇されたケースは除きます。
特定受給資格者に該当する事例については「特定受給資格者とは」で詳しく解説しています。
以下のような理由で失業した場合、特定理由離職者に該当します。
こうした事例については「特定理由離職者とは」で詳しく解説しています。
1.自己都合で退職した「一般離職者」
失業時の 年齢 | 雇用保険の加入期間 | ||
---|---|---|---|
1年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | |
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
2.「特定受給資格者」または「特定理由離職者」
失業時の 年齢 | 雇用保険の加入期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
半年以上 1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30〜34歳 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35〜44歳 | 240日 | 270日 | |||
45〜59歳 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60〜64歳 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
3.就職困難者
失業時の 年齢 | 雇用保険の加入期間 | |
---|---|---|
半年以上1年未満 | 1年以上 | |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45〜64歳 | 360日 |
基本手当を受ける場合、初めにハローワークで求職の申込みと離職票の提出を行い、雇用保険の受給資格を得ます。その後、雇用保険受給説明会に出席し、基本手当の初回給付を受けるという流れになります(参考)。
受給資格を得た日から通算して7日間を待期期間といい、この期間は基本手当を始めとした雇用保険の各種給付を受けられません(その分、基本手当の初回給付額は少なめになります)。よって、受給資格を得た日から8日目が給付開始日となります。
給付開始日から毎日1日分の基本手当が給付されるわけではなく、およそ1ヶ月分が、およそ1ヶ月後にまとめて支給されます。よって受給資格を得てから初回の基本手当が振り込まれるまでは、最速でも1ヶ月程度かかります。
以下のケースでは、待期期間が過ぎた後も更に一定の期間、基本手当の支給が行われません。
基本手当は、初回給付後は原則として28日分の金額が28日ごとに支給されます。
<給付例>
例えば所定給付日数が90日の人が、休まずに求職活動を続けた場合、以下のようにおよそ4ヶ月にわたって計4回基本手当が支給されます。
基本手当の給付が終了するのは以下のような場合です。
<給付は就職が決まるまで>
基本手当が給付されるのはあくまで失業中だけです。再就職が決まったり、自ら事業を始めることが決まった場合、所定給付日数が残っていてもその後は支給されません。
その代わり、早期に再就職が決まり、所定給付日数の1/3以上が残っている場合は、再就職手当や就業手当が受けられます。