社会保険の定時決定について

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年1回社会保険料額を見直す「定時決定」


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1.定時決定とは

社会保険料額は毎月の従業員の報酬をもとに算出されます。基本給や諸手当等を含めた1ヶ月の報酬(給与)を「報酬月額」といい、この報酬月額の平均値から決定される「標準報酬月額」によって社会保険料額も決まります。

標準報酬月額が初めに決まるのは会社に雇用されるなどして社会保険の被保険者となった時ですが、報酬はその後の昇給などで変動することがあります。既に決定した標準報酬月額と実際の報酬額に大きな差が生じないように、毎年1回標準報酬月額の見直しを行います。これが「定時決定」です。そして定時決定の一連の手続きを「算定」といいます。

【関連項目】

◆定時決定の対象者

原則として7月1日現在の社会保険の被保険者が対象です。欠勤中の人、休業中の人、海外勤務で日本にいない人も対象となります。
ただし、7月1日現在で被保険者であっても次のような人は除きます。

<対象から外れる人>

  • 前月の6月1日以降に被保険者になった人
    →翌年の7月に定時決定を行います
  • 7月に随時改定による月額変更届を提出する人
  • 7月に育児休業等終了時変更届を提出する人
  • 6月30日以前に退職した人(資格喪失日7月1日以前)

◆行う時期と適用期間

6月の報酬が確定した後に、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届(算定基礎届)」を作成し、7月1日〜10日までの間に管轄の年金事務所または健康保険組合に届け出ます。
※インターネットを利用した電子申請も可能です。

審査後、申請内容に不備がなければ、決定された標準報酬月額を通知する「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」が届きます。新たな標準報酬月額はその年の9月から翌年8月まで適用されます(10月の給与から新たな社会保険料を控除します)。

※毎年5月下旬〜6月に申請書類一式が運営期間から送付されます。
※申請手続きが期限より遅れても、申請が受理されなかったり罰則があるといった訳ではありませんが、できる限り早めに手続を行いましょう。手続きが行われないと9月頃に督促状が届きます。

【関連リンク】


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2.定時決定のやり方

2-1.報酬月額を計算する

定時決定では、原則として4月、5月、6月に支給した報酬月額と、その3ヶ月合計および平均を算定基礎届に記入します。
この報酬月額の3ヶ月平均をもとにして9月以降1年間の標準報酬月額が決定・通知されます。

注意点

  • 算定の対象月に支払われた報酬が、その月野報酬月額となります。例えば3月1日〜末日までの報酬を4月10日に支払う場合、会社としては「3月分の給与」として取り扱っても、実際に支払われた月が4月なので、4月の報酬月額となります。
  • 後述する支払基礎日数の条件を満たさない月については合計および平均の計算対象から外します。
報酬について

ここでいう報酬(給与)とは、労働基準法上の「賃金」とは定義が異なり、労働を提供した対価として受け取る物すべてが対象です。基本給のほか各種手当や現物支給される物も含みます。
詳細は「報酬月額の求め方」を参照してください。


2-2.支払基礎日数を数える

支払基礎日数とは、報酬を計算する際の基礎となる日数のことです。4月、5月、6月の各月の支払基礎日数を算定基礎届に記入します。

ここで一つ注意が必要です。支払基礎日数は17日以上でなければならない(パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者は11日以上※)という決まりがあります。
支払基礎日数の条件を満たさない月については、報酬月額の合計額と平均額を計算する際に対象から除外します。日数の条件を満たす月のみで算出します。

※短時間労働間の者とは1週所定労働時間と1か月の所定労働日数が一般社員の4分の3未満の人のことです。短期労働者の支払基礎日数条件は以前は「15日以上」でしたが、法改正によって平成28年10月1日から「11日以上」に変わりました。>

◆月給制や週休制の場合

欠勤しても基本給が減額にならない完全月給制や週休制の場合、対象月の歴日数が支払基礎日数となります。
歴日数とは日曜日や休日なども全て含めた日数のことです。ただし、欠勤するとその日数分の給与が減額される日給月給制ような雇用契約の場合は、歴日数から欠勤日数を差し引いた日数が支払基礎日数となります。

(例)当月21日〜翌月20日の報酬を翌月25日に支払うケース(欠勤分の減額なし)

  • 4月の支払基礎日数
    → 3月21日〜4月20日の歴日数なので、31日
  • 5月の支払基礎日数
    → 4月21日〜5月20日の歴日数なので、30日
  • 6月の支払基礎日数
    → 5月21日〜6月20日の歴日数なので、31日
◆日給月給制の場合

欠勤するとその日数分の給与が減額される日給月給制のような場合は、就業規則などに基づいて事務所が定めた日数から欠勤日数を差し引いた日数が支払基礎日数となります。休日は日数に含まれません。

(例)当月21日〜翌月20日の報酬を翌月25日に支払うケース

  • 4月の支払基礎日数(所定の勤務日数20日、欠勤2日)
    → 3月21日〜4月20日の所定勤務日数20日から欠勤分の2日を差し引いて、18日
  • 5月の支払基礎日数(所定の勤務日数18日、欠勤3日)
    → 4月21日〜5月20日の所定勤務日数18日から欠勤分の3日を差し引いて、15日
◆日給制や時給制の場合

対象月で実際に出勤した日数が支払基礎日数となります。

※有給休暇や休日出勤について

有給休暇を取得した日、休業手当が支給された日、休日出勤した日など、実際に賃金が支給される日については賃金支払基礎日数に含まれます。


2-3.報酬月額平均の計算と算定基礎届の記入

<例1>月給制の正社員

報酬月額支払基礎日数
4月18000031
5月19000030
6月18500031

(180000+190000+185000)/3 = 185,000円


<例2>日給月給制の派遣社員

報酬月額支払基礎日数
4月21000020
5月15200016
6月19800019

5月は支払基礎日数が17日未満であるため計算から除外します。

(210000+198000)/2 = 204,000円


<例3>時給制のパートタイマー

報酬月額支払基礎日数
4月 7600014
5月 5000010
6月 8200015

4、5月は支払基礎日数が15日未満であるため計算から除外します。

(82000)/1 = 82,000円


<例4>4月、5月、6月が全て対象月とならない場合

長期の病欠などで、3ヶ月間の支払基礎日数が全て17日未満(短期労働者なら15日未満)の場合は、原則としてこれまでの標準報酬月額を持ち越すことになります。


2-4.算定基礎届の記入と注意点

  • 記入例を開く(PDFファイル)
  • 支払基礎日数が足りないため報酬計算の対象とならない月の書類上の記載の仕方は、報酬欄は0円、支払基礎日数欄は0日と記載します。

2-5.社会保険料額の確定

定時決定用の書類一式(算定基礎届、総括表、総括表附表)が準備できたら、管轄の年金事務所または健康保険組合に提出します。
後日、決定された標準報酬月額を通知する「準報酬決定通知書」が届きます。新たな標準報酬月額を最新の保険料額表にあてはめて、新たな社会保険料額(健康保険料額と厚生年金保険料額)を確定します。
【参考】保険料額表を使って社会保険料を調べる

新たな標準報酬月額は原則としてその年の9月から翌年8月まで適用されます。10月の給与から新保険料の控除を始めます。



関連項目


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