労働保険料について
〜計算方法、申告・納付のやり方

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労働保険料について

雇用保険労災保険をあわせて「労働保険」といいます。労働保険料は雇用保険料と労災保険料の合計で、事業主(会社)は年に1回、労働保険料を算出し、期限内に申告・納付する必要があります。

<目 次>

  1. 労働保険料の計算方法
  2. 労働保険料の申告・納付

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1.労働保険料の計算方法

労働保険は雇用保険と労災保険を合わせた名称であるため、労働保険料も雇用保険料と労災保険料の合計になります。
よって以下の計算式によって算出されます。


より細かく見ると、


  • 雇用保険料 = 雇用保険の被保険者である従業員の賃金 × 雇用保険料率
  • 労災保険料 = 労災保険の被保険者である従業員の賃金 × 労災保険料率

となります。

雇用保険料と労災保険料の計算方法は、それぞれの項目を参照してください。


◆「賃金」について

計算対象となる「賃金」とは、税金や社会保険料等を控除する前の支払総額で、賞与や多くの手当を含みますが、退職金や祝い金などの一時金の類は含まれません。


◆注意すべきポイント

雇用保険料と労災保険料の計算式はよく似ています。それぞれの保険の加入者(被保険者)の賃金に、一定割合(保険料率)を乗じて算出します。

それぞれの保険料を計算する際に気をつけるべきポイントは以下の2点です。

1.被保険者の範囲

労災保険は一度でも賃金の支払いのあった者は全て被保険者となります(事業主等は除く)。極端な話、1日だけアルバイトをした人も被保険者になります。
それに対し、雇用保険は被保険者となるため条件がもう少し厳しく、派遣社員やパートタイマーなどの非正規雇用の場合は、雇用期間や勤務時間が規定の水準以上でないと被保険者にはなりません(参考)。また、64歳以上の者(免除対象校年齢労働者)は雇用保険料が免除されます。こうした従業員の賃金は保険料の計算対象から除外します。

2.保険料の負担者の違い

労災保険料は全額、事業主(会社)が負担します。毎月従業員の給与から控除する必要がなく、保険料の計算も年に1度だけで済みます。
それに対し、雇用保険料は事業主と従業員とで分けて負担します。毎月従業員の給与から控除しなければならず、保険料も毎月計算しなければなりません。

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2.労働保険料の申告・納付

労働保険料は、前年度1年間の雇用保険料と労災保険料を合計し、原則として年に1度、まとめて申告・納付します。
※ごく一部の事業(二元適用事業)では、労災保険料と雇用保険料を別々に納付します。

2-1.申告の概要

<1.確定保険料を計算する>

労働保険料の保険年度は、4月1日〜翌年3月31日までです。
4月に入って年度が変わったら、前年度に全従業員に支払った賃金総額に保険料率を掛けて保険料を算出します。これを確定保険料といいます。

具体的には、賃金総額に労災保険料率を掛けて算出する「労災保険料」と、雇用保険料率を掛けて算出する「雇用保険料」とを足して、労働保険料を算出します。具体的な計算方法は後述します。


  • 労働保険料 = 雇用保険料 + 労災保険料

<2.概算保険料を計算する>

申告が必要なのは前年度の確定保険料だけではありません。当年度に支払うと見込まれている保険料を、確定保険料を基にして概算で計算し、前もって申告・納付します。この保険料を概算保険料といいます。

<3.差額を精算する>

更に、前年度に前もって納付した概算保険料と、今年度に実際に納付する確定保険料とでは金額が異なり、差額が生じるはずなので、その精算も行います。
前年度に納めた概算保険料が確定保険料よりも少なかった場合は、不足分を本年度に申告・納付する概算保険料に加算します。逆に前年度の概算保険料で納めすぎた場合は、超過分を本年度に申告・納付する概算保険料から減算します。




1〜3の作業を毎年繰り返すことになります。これを労働保険料の年度更新といいます。

例えばH28年6月にH28年度の年度更新をする際には、以下の3つの作業を順番に行うことになります。

  1. H27年度の確定保険料を計算
  2. 「1」で算出したH27年度の確定保険料と、H27年度に納付済みの概算保険料との差額を計算
  3. H28年度の概算保険料に、「2」で算出した差額分を加算または減算した労働保険料を申告・納付する

2-2.申告書作成の流れ

労働保険料の申告は、毎年6月1日〜7月10日の間に行います。
新年度(4月)に入ったら、早めに年度更新の準備に取りかかったほうが良いでしょう。


手順1.確定保険料算定基礎賃金集計表の作成

労働保険料の申告で行うことは、労働保険料申告書の提出です。

申告書を作成するためには、雇用保険・労災保険それぞれの対象者に対して、前年度1年間に支払った賃金総額を把握しておかなければなりません。
そのために、毎月の支払賃金総額等をまとめた「確定保険料(および一般拠出金)算定基礎賃金集計表」をあらかじめ作成しておきましょう。

※集計表は申告後の控えと一緒に保管しておくと良いでしょう。
※集計表は提出する書類ではないので、書式は決まっていません。


集計表の作成にあたっては、労働保険料の対象となる「賃金」の範囲を把握しておきましょう。
なお、4月1日〜翌年3月31日に支払いが確定した賃金が対象です。実際の支払日がこの算定期間外であっも問題ありません。


また、保険の対象となる従業員の範囲も確認しておきましょう。
労災保険は原則として全従業員が被保険者となりますが、雇用保険は契約期間や勤務時間の短い非正規雇用者は被保険者とならないほか、64歳以上の者(免除対象校年齢労働者)は雇用保険料が免除されるため、こうした人達の賃金分を差し引いた賃金総額を出しておきましょう。


手順2.労働保険料申告書の作成

集計表を作成したら、それをもとに申告・納付する保険料を「労働保険概算・確定保険料申告書」に記入します。
申告書は労働局から送付されます。労働基準監督署にも用意してあります。電子申請も可能です。

申告書は以下の流れで作成します。


  1. 前年度の確定保険料を算出する
  2. 前年度の概算保険料と「1」との差額を算出する
  3. 本年度の概算保険料を算出する
  4. 「2」と「3」から、本年度に納める労働保険料を算出する
  5. 「4」に一般拠出金を加えて、納付総額を算出する

@
まず、集計表で算出した前年度の賃金総額をもとに、雇用保険料労災保険料一般拠出金を算出します。

  • 雇用保険料 = (被保険者の賃金総額 − 満64歳以上の被保険者の賃金総額) × 雇用保険料率
  • 労災保険料 = 事業主等を除く従業員の賃金総額 × 労災保険料率
  • 一般拠出金 = 全従業員の賃金総額 × 一般拠出金率(業種を問わず一律0.002%)

※「一般拠出金」とは?
石綿(アスベスト)健康被害救済基金への拠出金のことで、労災保険の適用事業所は必ず納付しなければなりません。労働保険料と合わせて納付します。

A
前年度の確定保険料を算出したら、次に前年度の概算保険料との差額を精算します。
採用、退職に伴う従業員の変動などによって概算保険料と確定保険料には通常、差額が出ます。確定保険料のほうが多い場合は不足額とし、少ない場合は充当額とします。

B
次に本年度の概算保険料を求めます。
厳密には本年度の賃金総額の見込額に保険料を乗じて算出しますが、実際は前年度の確定保険料をそのまま流用してかまいません。ただし、見込額が前年度の2倍以上、または半分未満になることがわかっている場合には、実際の見込額から保険料を算出します。

C
次にAにおいて不足額が出ていればBの概算保険料に加算し、充当額が出ていれば概算保険料から差し引きます。

D
こうして納付する労働保険料を求めたら、本年度の一般拠出金を加算します。これが本年度に納める総額になります。


2-3.保険料の申告と納付

申告書作成後、労働保険料と一般拠出金を申告・納付します。
申告書に付いている領収済通知書(納付書)を使って、6月1日〜7月10日(10日が休日なら翌営業日)までに納付します。

一括納付が原則ですが、以下のいずれかに該当する場合は3回に分けて分割納付できます。

  • 本年度の概算保険料申告額が40万円以上
    →雇用保険料のみ、または労災保険料のみの納付の場合は20万円以上
  • 労働保険事務を労働保険事務組合に委託している

納期限は、1期目が7月10日、2期目が10月31日、3期目が1月31日です。端数が出た場合は1期目にまとめて納付します。

※申告書は金額を間違えても訂正できますが、領収済通知書は金額の訂正ができないため注意しましょう。

「労働保険事務組合」とは
中小事業主の委託を受けて労働保険事務を行う団体で、事業協同組合、商工会議所などがあります。委託できるのは、常時使用する従業員が、金融・保険・不動産・小売業では50人以下、卸売・サービス業では100人以下、その他の事業では300人以下の会社に限られます。
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