社会保険(厚生年金保険・健康保険) の加入条件 |
社会保険の加入について
※平成28年10月1日から新たに適用となった、「短時間労働者の社会保険」については別項で詳しく解説しています。
世間一般の会社や事業所の多くは社会保険、つまり健康保険と厚生年金保険に加入しており、そこで働く労働者もほとんどが社会保険に加入しています。
全ての事業所が無条件に社会保険に加入できるわけではなく、一定の加入条件があります。条件を満たす事業所は法律によって加入が義務付けられています(強制加入)。
また、労働者についても社会保険に加入している事業所で働いていれば無条件に社会保険が適用となるわけではなく、勤務時間と勤務日数について一定の条件を満たしている場合に加入が義務付けられます。条件を満たさない場合は加入することができません
<目 次>
1.社会保険の加入条件(事業所)
1-1.強制加入となるケース
以下のどちらかにあてはまる事業所は、社会保険に加入しなければなりません(強制加入)。
- 法人事業所である
- 個人事業所であり、常時5人以上の従業員を使用している(例外あり)
法人事業所の場合
法人事業所とは、株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、社団法人、財団法人などの法人格のある会社・法人のことです。
通常、○○会社や△△法人という名称がついています。
法人事業所の場合、たとえ事業主1人の会社であっても強制加入となります。
個人事業所の場合
個人事業所とは法人格を持たずに事業を行っている個人や団体のことです。個人経営のお店や自営業者が多いです。
個人事業所の場合、常時使用される従業員が5人以上であれば強制加入となります(一部の業種を除く)。
【関連項目】
※社会保険への加入義務を怠ると…
年金事務所は、社会保険の加入義務があるのに未加入の会社がないか、常に調査を行っています。
義務を果たさず未加入であることが判明した場合のペナルティは主に2つです。
一つは、過去2年分の被保険者全員分の保険料をまとめて納付しなければならなくなります。
更に、本来、社会保険料の負担は労使折半ですが、追徴発生時に被保険者がすでに退職していた場合、従業員分も会社が負担しなければならなくなります。
2つめは健康保険法の罰則で、健康保険法第208条「6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金」と定められています。悪質なケースではこうした罰則も適用される恐れがあります。
1-2.任意加入となるケース
以下のようなケースでは社会保険に加入する義務はなく、加入するかどうかを任意で選べる任意適用事業所となります。
- 常時使用される従業員が5人未満の個人事業所
- 一部の業種の個人事業所
「一部の業種」について
以下の業種の個人事業所は、従業員の人数に関わらず社会保険への加入は任意になります。
- 第一次産業(農林水産業)
農業、漁業、林業など - サービス業
飲食店、料理店、理容・美容業、旅館・宿泊業、飲食店、料理店、クリーニング業、ビル清掃業、浴場、写真、映画・娯楽業など - 士業
弁護士、税理士、会計士、社会保険労務士など - 宗教業
神社、寺など
社会保険に加入するには
任意適用事務所が社会保険に加入するためには、以下の要件を満たした上で年金事務所へ申請を行い、厚生労働大臣の認可を受ける必要があります。
- 事業所の常時使用される従業員(社会保険の対象となる従業員)の2分の1以上の同意を得る
従業員の同意を得たら、必要書類を準備して地区の年金事務所へ持参または郵送して手続きを行います。電子申請も可能です。
ちなみに任意で社会保険に加入した後に社会保険からの脱退を希望する場合は、被保険者の4分の3以上の同意を得た上で、加入時と同様の手順で手続きをする必要があります。
【参考サイト】
<※注意!>
社会保険が適用となった場合、加入を希望するしないに関わらず、社会保険の加入条件を満たす従業員は全員強制加入となります。また、事業主とその同居の家族従業員は社会保険に加入できません。
2.社会保険の加入条件(労働者)
会社や個人事業所で働く労働者が社会保険に加入するには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 勤務先が社会保険の適用事業所である
- 事業所に常時使用されている
条件1.勤務先が社会保険の適用事務所
事業所の加入条件で解説したとおりです。
○○会社や△△法人といった法人事業所は無条件で適用事務所になります。法人格を持たない個人事業所の場合は、定められた要件を満たす場合に適用事務所となります。
条件2.常時使用される労働者
二つ目の条件は、社会保険の適用事業所に「常時使用」されていることです。
法律で以下のように規定されています。
社会保険に加入している事業所に常時使用される方は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず被保険者となります。
「常時使用される」とは、雇用契約書の有無などとは関係なく、適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受けるという使用関係が常用的であることをいいます。試用期間中でも報酬が支払われる場合は、使用関係が認められることとなります。
パートタイマー・アルバイト等でも事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となります。1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上である方は被保険者とされます。
つまり、一般社員であれば問題なく「常時使用」にあたり、派遣社員・パート・アルバイト等の非正規雇用労働者であれば、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上であれば「常用使用」となります。
以下のような方は基本的に「常用使用」とはみなされませんが、一定期間を超えて雇用される場合は、常時使用とみなされます。
雇用形態 | 常用使用となるケース |
---|---|
日雇い | 1か月以上引き続き雇用されるようになった場合は、その日から常用使用となる |
雇用契約が2か月以内 | 所定の期間を超えて引き続き雇用されるようになった場合は、その日から常用使用となる |
雇用契約が4か月以内 | 4か月以上継続して雇用される予定の場合は、当初から常用使用となる |
雇用契約が6か月以内 | 6か月以上継続して雇用される予定の場合は、当初から常用使用となる |
所在地が一定でない事業所で働く | なし |
また、平成28年10月1日以降は、常用使用に該当しない短時間労働者であっても、特定の条件を満たす場合に限り社会保険に加入できるようになりました。