社会保険の随時改定について

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不定期に社会保険料額を見直す「随時改定」

<目 次>

  1. 随時改定とは
  2. 随時改定を行う条件
    3つの要件がそろった時に随時改定を行う
  3. 随時改定のやり方・手続きの流れ
    どのタイミングで行うか、いつから適用されるか、必要な書類と書き方など

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1.随時改定とは

社会保険料の計算の基礎となる「標準報酬月額」は、初めて社会保険の資格を取得した時や、毎年7月の定時決定時に確定し、原則として翌年8月まで変更しません。しかし、昇格・降格、給与形態の変更などによって固定的な給与の額が著しく変動した場合は、次の定時決定を待たずに標準報酬月額の改定を行います。これを「随時改定」といいます。

◆なぜ随時改定が必要なのか

従業員の社会保険料額は基本給や諸手当等を含めた月々の報酬「標準報酬月額」によって決まります。報酬の多い人ほどより多くの社会保険料を支払う形になっています。

じかし標準報酬月額の見直しを行うのが年1回の定時決定の時だけであると、定時決定後に給与額が大きく変わった場合でも翌年の定時決定時まで標準報酬月額が変わらず、給与額に見合わない社会保険料を支払い続けることになってしまいます。こうした実際の報酬額と社会保険料との差を埋めるために随時改定を行う必要があります。


2.随時改定を行う条件

随時改定を行うには、以下の3つの要件全てを満たす必要があります。
ただし一部例外もあります。



  1. 昇給・降級などで固定的賃金が変動した

  2. 三ヶ月の標準報酬月額が2等級以上変わった

  3. 三ヶ月間の支払基礎日数が全て17日以上

要件1.固定的賃金の変更

報酬は、固定的賃金非固定的賃金に分けられます。
固定的賃金とは、働いた時間や能率に関係なく毎月一定額が支払われるものを指します。逆に非固定的賃金とは、働いた時間や能率に応じて支払われ、毎月一定額でないものになります。


  • 固定的賃金
    基本給、通勤手当、家族手当、役職手当など
  • 非固定的賃金
    時間外手当、皆勤手当など

昇給や降級のほかにも、次のような場合も固定的賃金の変更が生じます。

  • 歩合給の単価や、能率給の割増率が変わった
    →以前と同じ量の仕事をこなした場合に賃金が変動する。
  • 給与形態が変わった
    →たとえば時給制や日給制から月給制に変わることで賃金額が変動することがある。

逆に出勤日数や残業時間の増減によって賃金が変動したようなケースは、非固定的賃金の変動であるため随時改定の対象とはなりません。

要件2.三ヶ月の標準報酬月額が2等級以上変わった

固定的賃金が変動した月とその後の2ヶ月間を合わせた計3ヶ月間の報酬月額の平均値(標準報酬月額)を計算し、その等級が現在の標準報酬月額の等級と比べて2等級以上の差がある必要があります。

例えば7月の定時決定で決まった標準報酬月額が「150.,000円(12等級)」で、その後の9月に昇給があり、9月・10月・11月の3ヶ月の標準報酬月額が「180,000円(15等級)」だった場合、3等級上がっているので随時改定の対象となります。

標準報酬月額の等級は「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」から調べることができます。
報酬月額の計算方法や保険料額表の見方については「社会保険料の計算方法」を参照してください。

要件3.三ヶ月間の支払基礎日数が全て17日以上

固定的賃金が変動した月とその後の2ヶ月間を合わせた計3ヶ月間の支払基礎日数が全て17日以上である必要があります。
※定時決定の要件ではパートタイマーなど短時間労働者の支払基礎日数は「11日以上」ですが、随時改定の場合は勤務形態に関わらず一律で17日となります。

支払基礎日数とはおおまかに言えば月々の勤務日数です。ただし完全月給制なら休日も日数に含むなど、勤務形態によって数え方に違いがあります。詳しくは「定時決定 - 支払基礎日数」を参照してください。


要件を満たさない月を挟むケース

例えば4月に昇給し、4月・5月・6月の標準報酬月額が2等級上がったが、6月の支払基礎日数が17日未満だった場合、6月時点では随時改定の対象にはなりません。
その後の7月・8月・9月の3ヶ月間で等級と支払基礎日数の要件を満たした場合、9月の給与を支給した時点で随時改定の対象となります。標準報酬月額は固定的賃金の変動が発生した以後連続した3ヶ月間の報酬を計算の基礎とします。

随時改定の例外

前述した3つの要件を全て満たしていても随時改定の対象とならないケースもあります。それは固定的賃金と標準報酬月額の増減が合わない時です。例えば固定的賃金が下がったのに標準報酬月額の等級は逆に2等級上がった場合などです。
時間外勤務が多い月が続いた時などにこうした逆行現象が生じることがあります(時間外手当は固定的賃金には含まれないが、報酬には含まれるため)。

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3.随時改定のやり方・手続きの流れ

3-1.随時改定のスケジュール

随時改定は、固定的賃金が変動してから早くて4ヶ月目に改定されます。

例えば、4月に昇給があり、4月、5月、6月の平均報酬月額と支払基礎日数が随時改定の条件を満たした場合、6月の給与支給後に3ヶ月間の報酬月額の平均額をもとに新しい標準報酬月額を算出し、速やかに随時改定の手続きを行えば、7月から標準報酬月額が改定されます。
8月に支払う給与では、改定後の標準報酬月額で計算した新しい保険料を給与から控除します。

手続きが遅れても罰則等はありませんが、その分、新しい保険料が適用される時期も遅くなるほか、手続きに必要な書類が増えることがあります。

随時改定と定時決定の時期が重なった場合

毎年7月は定時決定を行う時期ですが、4月に昇給などで固定給が変動して7月に随時改定を行う条件がそろった時は、定時決定は行わず随時改定の手続きのみを行います。

3-2.手続きの流れ

3ヶ月目の給与が支給されて随時改定の要件が整ったら、速やかに「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を管轄の年金事務所または健康保険組合に届け出ます。この随時改定の手続きは月変(げっぺん)とよばれています。
※インターネットを利用した電子申請も可能です。

随時改定は定期的に行うものではないため、必要書類が会社に送られてくることはありません。月額変更届はあらかじめ年金事務所か健康保険組合に取りに行く必要があります。日本年金機構のホームページからダウンロードすることもできます。

【関連リンク】

提出書類は原則として月額変更届のみですが、特定のケースにおいては添付書類が必要になります。

対象者提出書類
届出が改定月の初日から起算して60日以上遅れた場合、または標準報酬月額が5等級以上下がる場合
(被保険者が法人の役員以外)
  • 月額変更届
  • 賃金台帳の写し(固定的賃金の変動月の前の月から改定月の前の月分まで)
  • 出勤簿の写し(固定的賃金の変動月から改定月の前の月分まで)
届出が改定月の初日から起算して60日以上遅れた場合、または標準報酬月額が5等級以上下がる場合
(被保険者が法人の役員)
  • 月額変更届
  • 所得税源泉徴収簿または賃金台帳の写し(固定的賃金の変動月の前の月から改定月の前の月分まで)
  • 次の4つのうちどれか一つ(株式会社以外の法人はこれらに相当する書類)
    1.株主総会または取締役会の議事録
    2.代表取締役等による報酬決定通知書
    3.役員間の報酬協議書
    4.債権放棄を証する書類
上記以外月額変更届のみ

<月額変更届の記入例と注意点>

  • 記入例を開く(PDFファイル)
  • ※注意!!
    標準報酬月額の算出の元となる報酬月額には、時間外手当などの非固定賃金も含まれます。随時改定の要件の一つに「固定的賃金の変動」があるためか、非固定的賃金は報酬月額に含まれないと勘違いするケースがあるため注意しましょう。

3-3.社会保険料額の確定

提出書類の審査後、申請内容に不備がなければ、決定された標準報酬月額を通知する「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」が届きます。

新たな標準報酬月額を最新の保険料額表にあてはめて、新たな社会保険料額(健康保険料額と厚生年金保険料額)を確定します。
【参考】保険料額表を使って社会保険料を調べる

新たな標準報酬月額は、その後の定時決定や随時改定によって再び標準報酬月額が変更されるまで適用されます。



関連項目


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