雇用保険の就職促進給付
「再就職手当」

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早期に安定した職業に就いた者への給付


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1.再就職手当とは


基本手当(失業手当)の受給資格がある失業者が、"早期に"、"安定した職業"への再就職が決まる、または自分で事業を始めることになった場合に支給される給付金です。

失業後の求職活動中に支給される基本手当(失業手当)は、就職が決まった時点で給付がストップするため、早期に再就職が決まった人はあまり給付を受けられず、逆になかなか就職が決まらない人ほど長期間給付を受けることになります。

こうなると「せっかく暫くの間は基本手当をもらえるのだから急いで再就職を決める必要はない」と安易に考える人も出てきます。そうならずに早期に就職するよう促すために、基本手当の支給日数が一定以上残った状態で就職した人に対しては、残日数に応じた再就職手当が支給されるようになっています。


2.再就職手当を受けるための条件・対象者

再就職手当をもらうためには以下の要件を全て満たす必要があります。


  1. 基本手当の所定給付日数が1/3以上残っていること(早期の就職)

  2. 1年を超えて勤務することが確実であること(安定した職業)
    ※また、原則として再就職先でも雇用保険の被保険者になっていること

  3. 雇用保険の「待期期間」が過ぎてから就職していること

  4. 再就職先が、失業直前に勤めていた会社、またはその会社と密接な関わりのある会社ではないこと

  5. 自己都合で退職し、3ヶ月間の給付制限を受けている者については、7日間の待期期間後の1ヶ月間はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による再就職であること

  6. 過去3年間に再就職手当または常用就職支度手当を受けていないこと

  7. 再就職手当の支給決定の日までに離職していないこと

それぞれの要件について詳しく解説します。

要件1.所定給付日数の残日数について

所定給付日数、つまり基本手当を何日分もらえるかは、雇用保険の加入期間や年齢、退職理由などによって決まります。(参考:基本手当の給付日数
再就職が決まった時点で、所定給付日数の1/3以上が残っていなければなりません。

例えば所定給付日数が90日の人が、就職が決まるまでに52日分の基本手当を受給していたとすれば、残日数は38日です。この場合、残日数は90日の1/3である30日よりも多いため条件を満たします。

残日数が少なくても支給される手当

残日数は1/3未満であるが、その他の受給要件はほぼ全て満たしている場合は、常用就職支度手当の支給を受けられる可能性があります。この手当の対象となるのは、就職日において45歳以上である者や、心身に障害のある者などの就職困難者です。

要件2.勤務する期間について

再就職手当の受給条件の一つが"安定した職業への就職"です。安定した職業の基準として、雇用される期間が1年以上でなければなりません。特に雇用期間が定められていない正社員などは問題ありませんし、派遣社員・パート・アルバイトなどでも、契約期間が1年以上なら条件を満たします。

また、原則として再就職先でも雇用保険に加入することになっていなければなりません。自分で事業を始める人の場合は、自分以外の労働者を1人以上雇って雇用保険の適用事業所とならなければなりません(農林水産業は例外)。

雇用契約期間が1年未満の仕事に早期に就職が決まった場合は、再就職手当の代わりに就業手当の支給対象となります。

要件3.就職した時期について

雇用保険の受給資格を得た日から7日間の期間を待期期間といいます。待期期間は雇用保険による各種給付を受けられないことになっているため、この期間内に就職した場合は再就職手当の対象から外れます。ただ、基準となるのは就職の内定日ではなく初出勤日です。7日間の間に就職が内定しても、出勤日が7日間の後であれば問題ありません。

また、例え出勤日が待期期間後であっても、雇用保険の受給資格を得た日より前に既に就職の内定が決まっていた、つまりハローワークで求職活動をする前から就職が内定していた場合は再就職手当はもらえません。

要件4.同じ会社への再就職について

失業直前に勤めていた会社に再就職した場合は再就職手当の支給対象とはなりません。また、その会社と資本・資金・人事・取引面で密接な関わりのある会社であってもダメです。
こうした会社への就職は会社内での転勤や配置換えに近い位置づけであり、やむを得ない事情による失業を経ての再就職とはみなされません。

要件5.自己都合による退職の場合

自己都合で退職した者は、雇用保険の待期期間の直後に更に3ヶ月の給付制限を受けます(参考:基本手当の給付開始日)。
この給付制限を受けている者については、7日間の待期期間が過ぎた後の1ヶ月の間に再就職した場合、ハローワークか職業紹介事業者の紹介によって決まった就職でなければならないという決まりがあります。就職情報誌やチラシを見て自分で申し込んだり、知人の紹介による就職など、ハローワーク等を通さずに就職が決まったケースは再就職手当の対象外となります。1ヶ月が過ぎた後の就職ならこうした制限はありません。

職業紹介事業者とは

職業安定法における職業紹介事業の許可を取得している、または同事業を行う届出をしている民間の職業紹介事業者です。大手の派遣会社や有名な就職支援サイトを運営する会社などは、この事業者になっているケースが多いため、民間の就職サービスを利用した場合は運営会社に確認してみましょう。

要件7.再就職後の退職について

再就職手当を受けるには、就職が決まってから必要書類を提出して手続きを行う必要があります。
就職が決まった日から、再就職手当の支給が決定されるまでには早くても1ヶ月以上かかります。それまでの間に再就職先を退職してしまった場合は手当は支給されません。

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3.手当が支給されるまでの流れ・手続き

再就職が決まったら、ハローワークで再就職手当の申請を行いましょう。
就職が決まった日の翌日から1ヶ月以内に、以下の必要書類を提出しなくてはいけません。


  1. 再就職手当支給申請書
    →ハローワークからもらえるほか、インターネットを利用して入力・印刷することも可能です(こちら)。
  2. 採用証明書
    →雇用保険(基本手当)の受給資格の決定時にハローワークから渡される「雇用保険受給資格者のしおり」の巻末に付いています。
  3. 雇用保険受給資格者証
    →雇用保険(基本手当)の受給資格の決定後に開催される受給説明会で渡されます(参考)。

書類1と2については、再就職先の会社に記入してもらう欄もあります。
大きな会社の支店などでは、書類を一度本社に転送して記載してもらうなど、時間がかかるケースもあります。書類の準備に予想以上に時間がかかって1ヶ月の提出期限を過ぎてしまわないよう、必要書類の準備と会社への依頼は早めに行いましょう。

書類の提出後に受給要件を満たしているか審査が行われ、後日、支給の可否を記した決定通知が郵送で届きます。
無事支給されることが決まれば、指定した銀行口座に一括して入金されます。


4.支給額について

実際にどのくらいの再就職手当がもらえるのか解説します。

再就職手当は、就職が決まっていなければ受給できるはずだった基本手当のおよそ50〜60%分が一括で支給されます。
給付率は再就職が決まった時点での所定給付日数の残日数によって決まります。


  1. 所定給付日数の2/3以上を残して再就職
    → 給付率60%

  2. 所定給付日数の1/3以上を残して再就職
    → 給付率50%

再就職手当の計算式は次のようになります。


よって、早く再就職するほど、より多くの再就職手当が支給されます。

※基本手当日額とは基本手当の1日あたりの支給額のことです。ただし、再就職手当を計算する際の上限額が設けられています。離職時の年齢が60歳未満の場合は6,165円、60歳以上の場合は4,990円が上限です(令和2年7月末まで)。上限額は毎年8月1日に改定されます。

※基本手当日額と支給残日数は雇用保険受給資格者証に記載されています。

※給付率は平成29年1月1日以降はそれぞれ10%ずつ引き上げられる予定です。


計算例

基本手当日額が5,000円、所定給付日数が90日、残日数が65日の場合
(給付日数が2/3以上残っているため給付率は60%)

  • 5,000円 × 65日 × 60% = 195,000円

基本手当日額が4,000円、所定給付日数が240日、残日数が140日の場合
(給付日数が1/3以上残っているため給付率は50%)

  • 4,000円 × 140日 × 50% = 280,000円

5.再就職後の手当について

再就職先の賃金が、失業前の勤め先でもらっていた賃金よりも低い場合、つまり、再就職によって給与収入が減ってしまった場合、一定の条件を満たせば「就業促進定着手当」も受けることができます。

詳細は「就業促進定着手当とは」を参照してください。



就職促進手当一覧


  • 「再就職手当」:早期に安定した職に就いた者への給付
  • 就業手当」:早期に不安定な職に就いた者への給付
  • 就業促進定着手当」:再就職手当を受けた者の賃金が前職よりも下がった場合の給付
  • 常用就職支度手当」:障害者などの就職困難者が安定した職に就いた場合の給付
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