労働者の知識・技能習得を図る「公共職業訓練」について |
<目 次>
国や都道府県は、失業者(離職者)や在職者などの労働者および学卒者に対して、就職や職務上で役立つ専門的な技能・知識を習得させるための公共職業訓練を実施しています。
職業訓練にはいくつもの訓練コースがあり、IT、電気、機械、建築、介護など様々な分野の訓練を受けられます。それぞれ訓練期間や定員が定められており、失業者向け・在職者向けなど対象者別でもそれぞれ内容や訓練期間に違いや特徴があります。
<訓練コース例>
年間を通じて毎月複数の訓練コースが実施されており、受講者も随時募集しています。職業訓練の申込みはハローワークや公共職業能力開発施設を通じて行い、選考に通った後に受講指示を受けることで受講できるようになります。
離職者(失業者)の再就職に役立つ技能及び知識の習得を目的に行われる職業訓練です。
在職者(従業員)のスキルアップや新たな知識・技能の習得を目的に行われる職業訓練です。
中学校、高校、専門学校等を卒業した者に対し、職業に必要な基礎的な技術・知識を習得させるための職業訓練です。
職業訓練には失業者や在職者等を対象に様々な種類があると述べましたが、ここでは特に失業者向けの「離職者訓練」に絞って解説します。
失業者なら誰でも職業訓練に申し込めるわけではなく、以下の2つの条件を満たしている必要があります。
失業後に基本手当(失業給付)を受給しながらハローワークでの就職活動を希望する人であれば、最初に求職の申込みと基本手当の受給資格を得るための手続きを行うのが普通ですので、あまり問題はないでしょう。ちなみに雇用保険受給資格者証は受給資格が決定した後の「雇用保険受給者初回説明会」で配布されます。
職業訓練は訓練コースの内容に応じて、自治体が運営する訓練校、外郭団体が運営する訓練校、民間委託された企業などで実施されますが、各訓練校とコースの情報の多くはハローワークに集約されて公開されています。
ハローワークで職業訓練のパンフレットが配布されているほか、施設内のパソコンでどんな訓練コースがあるのか一括検索することもできます。職業訓練の相談窓口もあるのでそちらを利用するのも良いでしょう。
厚生労働省のホームページでも検索サービスが利用できるので、自宅で調べることもできます。
各訓練コースには応募期間が設定されているため、期間内にハローワークの窓口から申込みます。
<申込みの際に必要な物>
各コースは定員制なので、申込み後に選考作業があります。
主に書類選考によって受講者が決定されますが、長期間の訓練では面接や筆記試験も行われたりするなど各コースによって違います。あくまで受講者の選別が目的なので、内容は簡単なものです。
職業訓練は自分で申し込む以外にも、ハローワークから特定の職業訓練の受講を指示されることがあります。これは求職者の再就職に役立つと判断された場合に行われます。
この場合、例え基本手当の給付が終わって所定給付日数がゼロの状態であっても、訓練期間中は基本手当が支給されるという特例措置を受けられます。
※自分で申し込んで受講する場合は、所定給付日数が1日でも残っていないと基本手当は受給できません。
選考に合格すれば後日、合格通知書が届きます。その後は再度ハローワークに行って所定の手続きを行い、「受講指示」を受けることになります。
<持参物>
失業者向けの職業訓練は、テキスト代などの実費負担を除けば無料で受けられます。専門的な知識や技能を習得でき、その後の資格取得や就職に役立ちます。
職業訓練の受講者に対して支給される手当です。1日の受講に対して日額500円が支給される「受講手当」と、交通費にあたる「通所手当」があります。それぞれ上限額が設定されています。
技能習得手当を受けられるから基本手当は受給できないということはありません。両方受給できます。
しかも職業訓練を受講する時点で所定給付日数(基本手当を受給できる日数)が1日でも残っていれば、受講期間中はずっと基本手当が支給されます。所定給付日数の残りが1日の状態で1年間の職業訓練を受ければ、訓練が終わるまでの1年間は基本手当が支給されるというわけです。
通常の基本手当の受給条件である「失業認定日までに原則2回以上の求職活動」も受講中は必要ありません。(そもそも職業訓練自体が求職活動の一環ですし、受講期間中は原則として求職活動は行なえません)
また、自己都合によって退職したために基本手当の3ヶ月の給付制限を受けている人であっても、職業訓練中は制限に関係なく基本手当が受給できます。
<基本手当の不正受給対策>
以上のような基本手当の特例を悪用し、就職に役立てるために職業訓練を受けるという積極的な意思がないにもかかわらず、基本手当の受給を目的に職業訓練に申し込むケースがあります。
こうした例を防ぐために、「所定給付日数の残日数」が受講の可否を判断する基準の一つになっています。
厚生労働省から以下のように回答されています。
この文章からすると、残日数が2/3以上の人を職業訓練の主な対象としているが、その他の事情も考慮して決めるということのようです。実際、残日数が少ないから絶対に受講できないという訳ではなく、各ハローワークや担当者の裁量に任されている部分も大きいようです。
しかし残日数が少ないと選考に通っても受講指示を受けられなかったり、場合によっては受講の申込み自体を拒否されたりと、ある程度不利になるのは確かなようですので、職業訓練の受講を希望する人は残日数が多く残っているうちに申し込むようにしましょう。