雇用保険の高年齢雇用継続給付 2.「高年齢再就職給付金」 |
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雇用保険には、労働者が新たに雇用されたり、今後も継続して働き続けられるよう支援する雇用促進給付があります。
その一つが、60歳以上の高齢者の雇用促進を目的とする「高年齢雇用継続給付」です。
高年齢雇用継続給付には2種類あります。
一つは60歳近くまで長期間働き、基本手当等を受給せずに60歳以降も働いている者を対象とした「高年齢雇用継続基本給付金」です。もう一つは基本手当(失業手当)を受給した後、60歳以降に再就職した者を対象とした「高年齢再就職給付金」です。
どちらも60歳以降の賃金が以前よりも低下した者に給付金が支給される制度です。給付を受けるためには定められた基準以上に賃金が低下しており、かつ、雇用保険に加入していた(被保険者だった)期間もある程度長くなければなりません。詳しい受給条件については後述します。
ここでは「高年齢再就職給付金」について解説しています。「高年齢雇用継続基本給付金」については別項を参照してください。
高年齢再就職給付金の支給を受けるには、以下の要件を全て満たす必要があります。
それぞれの要件について詳しく解説します。
再就職した日が60歳になった日よりも後でなければなりません。また、現在の年齢が65歳以上の人は給付対象外となります。
再就職先が安定した職業でなければなりません。安定した職業かどうかは雇用保険の「一般被保険者」であるかどうかで判断されます。一般被保険者に該当するのは雇用期間の定めのない65歳未満の一般社員や、雇用期間と労働時間が一定水準を超える派遣社員やパートなどの非正規労働者です。
60歳以降に再就職する以前に、基本手当(失業手当)を受給していることも条件です。更に基本手当について以下の2つの要件も満たしている必要があります。
基本手当を何日分受給できるかは、失業時の年齢や失業に至った理由、失業前に雇用保険に加入していた(被保険者だった)期間などによって決まります(参考:基本手当の受給期間)。
この「失業前に雇用保険の被保険者だった期間」のことを「算定基礎期間」といいます。 算定基礎期間が5年以上必要です。
失業や転職などで複数の会社で働いていた場合、通常、その合間に雇用保険に加入していなかった時期が生じます。その空白の期間が1年未満で、かつ、その期間に基本手当などの求職者給付や就業促進手当を受給していなければ、それぞれの勤務先における加入期間を合算して算定基礎期間とすることができます。未加入期間が1年以上であったり各種給付を受けていた場合は、再び被保険者になった日から改めて起算します。
基本手当を受給できる日数のことを「所定給付日数」といいます。基本手当を長期間受給するほど、受給可能な日数は減っていきます。この日数が100日以上残っていなければなりません。
例えば所定給付日数が150日の人が、3ヶ月間基本手当を受給し続けたとすると、合計でおよそ80日分くらいの基本手当を受給することになります。そうなると残日数はおよそ70日で100日に満たないため、高年齢再就職給付金は受給できません。
原則として、再就職後の1か月の賃金が、以前の勤め先の賃金月額の75%未満であることが条件です。
ここで言う「賃金」とは税金や雇用保険料などが控除される前の総支給額です。各種手当も含まれますが、賞与や退職金などの一時金は含まれません(賃金一覧表)。社会保険の計算における「報酬」とは賞与の定義などに若干の違いがあります。
以前の勤め先の賃金月額とは、退職日直前6ヶ月の平均賃金のことです。
6か月間(180日)の賃金合計を180日で割って算出した1日あたりの賃金「賃金日額」を30倍した金額です。
賃金月額は自分で計算するわけではありません。
給付金の申請手続きの前に、ハローワークに必要書類を提出して「受給資格の確認」を行うのですが、その際に賃金月額が決定・登録されます。手続き後にハローワークから送付される「受給資格確認通知書」に記載されています。
※支払基礎日数が11日未満の月については、賃金月額の計算対象から除外されます。
※賃金月額には上限と下限があります。上限額は476,700円で、下限額は75,000円です(令和2年7月31日まで)。上限・下限額は毎年8月1日に改定されます。
雇用保険による給付の一つに「再就職手当」があります。
主な受給条件は「基本手当の支給日数が1/3以上残った状態で再就職すること」で、その他の条件も高年齢再就職給付金と重なる部分が多いです。そのため、再就職手当と高年齢再就職給付金の両方の受給条件を満たすケースが多くなります。
しかしこの2つの給付を両方受けることはできない決まりになっており、再就職手当の受給者は高年齢再就職給付金を受給することはできません。逆も同じです。
再就職手当の方を受給する場合、再就職手当の申請期限は再就職の日の翌日から1ヶ月後であるため、早めに申請を行いましょう。
高年齢再就職給付金の受給条件については、厚生労働省による案内も参考にしてください。
支給を受けられる期間は「再就職した日の前日における基本手当の支給残日数」によって変わります。残日数が多いほど長期間支給を受けられます。
<残日数が200日以上の場合>
<残日数が100日〜199日の場合>
どちらの場合も、65歳になった月以降は支給を受けられません。
また、各月の1日から末日まで雇用保険の一般被保険者でなくてはなりません。これらの支給期間内であっても、1日でも被保険者ではない日がある月については支給対象外となります。
まず、以下の計算式によって各月の賃金の低下率を計算します。
支給額の計算の仕方は、賃金の低下率によって変わります。
<低下率が61%以下の場合>
<61%より大きく75%未満の場合>
賃金が大きく下がるほど支給額は大きくなります。
現在の賃金が以前の賃金月額の61%以下なら、現在の賃金の15%にあたる金額が支給されます。この15%が最も大きな支給率です。低下率が61%から75%へと大きくなるほど、逆に支給率は下がっていきます。低下率が74%位だと、支給率は1%程度です。
支給対象月に賃金が低下した理由が以下のようなものである場合、雇用保険による給付がなされるのは適切でない、または他の社会保険により保障がなされるのが適切と判断されることがあります。そうした場合、低下した分は実際には支払われたものとした上で低下率を計算します。
支給額の計算例などについては、厚生労働省による案内を参照してください。
給付金の支給を受けるためには、はじめに受給資格を得るための手続きを行い、資格を得た後に支給を申請する手続きを行います。
必要書類の提出は事業主(会社)が行います。
事業主は給付対象者を雇用した日以後、速やかに事業所の所在地を管轄する最寄りの公共職業安定所(ハローワーク)まで提出します。
※雇用保険の加入対象となる従業員を新たに雇った場合、事業主は雇用保険加入被保険者資格取得届をハローワークに提出しなければなりませんが、できればこの時に一緒に提出するよう推奨されています。
必要書類を提出後、ハローワークで受給資格を決定する審査が行われます。
受給資格が決定すれば、「受給資格確認通知書」と、給付金の支給申請に必要な「支給申請書」が事業主宛に届きます。否認された場合は「受給資格否認通知書」が届きます。
無事受給資格が得られたら、続いて給付金の支給申請を行います。
必要書類の提出は原則として事業主(会社)が行いますが、やむを得ない理由により会社を経由して提出することが困難な場合や、本人が自ら申請手続きを行うことを希望する場合は、本人が提出することも可能です。
初回の支給申請時は、支給を受けようとする月の初日から4ヶ月以内に、事業所の所在地を管轄する最寄りの公共職業安定所(ハローワーク)へ提出します。
2回目以降は原則として2ヶ月に一度ハローワークが指定する支給申請月の支給申請日に提出します。
支給申請日はハローワークから交付される「高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書」に記載されています。
ハローワークで審査が行われ、後日、給付金の支給の可否と支給額が記載された「支給決定通知書」と、次回分の支給申請書が届きます。
支給が決定したら、決定から概ね1週間で指定した金融機関の口座に給付金が振り込まれます。