雇用保険の雇用継続給付 3.「介護休業給付」 |
雇用保険には、労働者が新たに雇用されたり、今後も継続して働き続けられるよう支援する雇用促進給付があります。
その一つが、家族を介護するために休業する者に対して給付金を支給する「介護休業給付」です。定められたいくつかの要件を満たした場合に支給されます。
支給を受けるための条件、支給される金額と期間、受給までの流れ・必要な手続きなどについて解説します。
<目 次>
介護休業給付の支給を受けるには、以下の要件を全て満たす必要があります。
それぞれの要件について詳しく解説します。
まず、原則として現在雇用保険に加入しており、更に雇用保険の「一般被保険者」でなくてはなりません。
雇用保険の一般被保険者に該当するのは雇用期間の定めのない65歳未満の一般社員や、雇用期間と労働時間が一定水準を超える派遣社員やパートなどの非正規労働者です。
この雇用保険に関する要件を満たさない例としては、「介護休業中は一時的な失業扱いとされて雇用保険も未加入となる」、「契約期間や勤務時間が短い非正規雇用者であるため雇用保険に加入していない」、「65歳以上であったり、日雇い労働者であるなど、一般被保険者以外の被保険者である」といったケースです。
また、介護休業後に退職することが決まっている場合は支給は受けられません。
特に非正規雇用者など雇用契約期間が定められている人の場合は、休業を開始する時点で同じ事業主に1年以上雇用されていて、かつ、休業開始日から起算して「93日+1年」を経過した日以降も引き続き雇用される見込みである必要があります。この期限内に雇用契約が満了し、更新されないことが確実である場合は支給は受けられません。
給付金の支給対象となる介護休業に認定されるのは、以下の要件を全て満たす場合です。
要介護状態とは、「病気やケガ、精神上の障害などにより、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」のことです。常時介護とは、歩行、排泄、食事などの日常生活に必要な行為に対する介護です。
要件の一つとして、「休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月以上あること」とされています。
支払基礎日数とは賃金支払の対象となる日数のことです。完全月給制の人なら働いていない休日や祝日も含まれるため毎月30〜31日になり、日給制の人などは実際に仕事をして日給をもらった日数になります。詳細はこちらを参照してください。
よって、月給制の人なら要件を満たさないケースはほとんどなく、それ以外の給与形態の人でも「賃金をもらって働いた日数が11日以上ある月」が12ヶ月以上あれば要件を満たすことになります。
2年の間に失業するなどして基本手当の受給資格の決定(※実際の受給ではありません)を受けた事がある場合は、それ以後の期間だけが対象となります。
また、2年の間にケガや病気等によって30日以上続けて賃金が支払われなかった期間があった場合、対象期間は「2年+支払いのなかった期間」になります(最大4年)。
介護休業中であっても、会社から有給や休業手当が支給されたり、月に何日かは仕事をするなどして、会社から何らかの賃金を受け取るケースは多いです。
介護休業中の月々の賃金が、休業前の賃金の80%未満でなくてはなりません。つまり休業中も休業前と同じくらいの賃金をもらっている場合は給付は受けられません。
※ここでいう「賃金」とは税金や雇用保険料などが控除される前の総支給額です。各種手当も含まれますが、賞与や退職金などの一時金は含まれません(賃金一覧表)。社会保険の計算における「報酬」とは賞与の定義などに若干の違いがあります。
※休業前の賃金とは休業直前の月給ではなく、休業直前6ヶ月間の平均賃金です(賃金月額)。賃金月額の計算の仕方は「支給額」の項目で解説しています。
介護休業中に仕事をした日数が、月々10日以下でなくてはなりません。
介護休業給付の対象期間のことを「支給対象期間」といいます。
一度の介護休業に対する支給対象期間は、休業開始日から最長で3ヶ月間です。3ヶ月が経過する前に休業を終えた場合は、休業終了日までとなります。
給付金の支給額は介護休業開始日から1ヶ月ごとに計算されますが、その度に1ヶ月分ずつ支給されるわけではなく、支給対象期間が過ぎた後にまとめて一括支給されます。
また、休業中に勤務日数や賃金が多いなど受給条件を満たさない月があれば、その月は給付金の支給対象にならず、その分、支給額が減少します。例えば支給対象期間が最長の3ヶ月あったとしても、毎月受給条件を満たしていなかったとすれば支給額はゼロになります。
原則として、同じ介護対象者に対して介護休業給付を利用できるのは1回のみです。
同じ家族の介護のために何度も介護休業を取得したとしても、過去に一度でも給付を受けていれば再度給付を受けることはできません。
※ただし対象者の要介護状態が以前給付を受けた時と異なる場合に限り、再度給付を受けることができます。この場合、給付金の支給日数は通算で93日が限度となります。例えば前回80日分の給付を受けていたとすれば、2度目は最大でも19日分の給付しか受けられません。
介護休業給付の1ヶ月あたりの支給金額は以下の計算式によって算出されます。
休業開始時の賃金日額とは、休業開始日直前6ヶ月間の賃金合計を180で割った金額です。つまり6ヶ月間の平均日給です。
さらに賃金日額に30をかけた金額を賃金月額といいます。6ヶ月間の平均月給といえます。
※ここでいう「賃金」とは税金や雇用保険料などが控除される前の総支給額です。各種手当も含まれますが、賞与や退職金などの一時金は含まれません(賃金一覧表)。社会保険の計算における「報酬」とは賞与の定義などに若干の違いがあります。
※<賃金月額の上限と下限>
計算した賃金月額が466,500円以上だった場合、賃金月額は一律466,500円となります(上限)。
反対に計算した金額が68,700円未満だった場合、賃金月額は一律68,700円となります(下限)。
1ヶ月ごとに支給額を計算するため、支給日数は原則として「30日」です。最後の月だけは支給期間の残日数が支給日数となります。
支給日数の例:支給期間が75日の場合
以上のことから、月々の支給額は休業前の平均賃金の67%程度の金額になります。
※最終月だけは少なめになります。
<支給額の制限について>
支給額には限度があります。1ヶ月あたりの支給額の上限は 312,555円です。また、下限は 68,700円 であるため、賃金月額が68,700円未満であっても月々68,700円が支給されます。(※これらの金額は令和2年7月末まで適用されます。金額は毎年8月1日に改定されます)
また、1ヶ月の支給額と、その月の賃金との合計が、「賃金日額 × 支給日数 × 80%」の金額よりも大きい場合、その超過分の金額が支給額から差し引かれます。賃金だけで「賃金日額 × 支給日数 × 80%」の金額を超える場合は支給額がゼロになります。
給付金の支給を受けるには、はじめに休業開始時の賃金月額を登録する手続きを行い、その後に給付の支給申請の手続きをするという流れになります。
※両方の手続きを同時に行うこともできます。
事業主は、雇用している被保険者が給付の対象となる介護休業を開始した場合、休業開始時賃金月額証明書等を、支給申請書を提出する日までに、事業所の所在地を管轄する最寄りの公共職業安定所(ハローワーク)へ提出しなければなりません。
「介護休業給付金支給申請書」を提出する日まで。
※介護休業給付金支給申請書は、賃金月額証明書を提出した後に、引き続き事業主経由で提出する書類です。
この2つを事業主が同時に提出することもできます。その場合は支給申請書の提出期限までに提出することになります。
書類の提出等の手続きは原則として事業主(会社)が行いますが、やむを得ない理由により会社を経由して提出することが困難な場合や、本人が自ら申請手続きを行うことを希望する場合は、本人が提出することも可能です。
提出先は賃金月額証明書の時と同じ最寄りのハローワークです。
※休業者本人が提出する場合は、書類1、3〜5のほかに、事業主から交付される「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」と「介護休業取扱通知書」が必要です。
介護休業終了日の翌日の2ヶ月後の月の末日までです。休業終了日が7月25日なら、7月26日〜9月30日までの間に提出します。
※介護休業期間が3ヶ月を超える場合は、3ヶ月を過ぎた日を介護休業終了日とみなします。
支給申請後、支給額等の記載された「支給決定通知書」か、または「不支給決定通知書」が届きます。
支給決定された場合は、支給決定から約1週間後に、指定した本人名義の金融機関口座に給付金が振り込まれます。