社会保険料の計算方法と保険料率

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社会保険料はどうやって算出される?


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1.基本の計算式

会社勤めをしている人の場合、社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)は毎月の給料から天引されています。
この社会保険料は、毎月の給与額とほぼ等しい「標準報酬月額」に、一定の割合「保険料率」をかけ合わせて計算します。



  • 健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率
  • 厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率

とはいえ上記の計算式を使ってわざわざ計算する必要はありません。標準報酬月額とそれに対する社会保険料額を一覧にしてまとめた「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」が、日本年金機構や健康保険協会から会社に定期的に送付されるため、標準報酬月額だけ算出すれば社会保険料額もすぐに分かるようになっています。

※この計算式が適用されるのは毎月の給与のみです。賞与(ボーナス)の場合、計算方法が若干変わります。


2.計算の元となる「報酬月額」の求め方

1ヶ月の報酬(給与)を「報酬月額」といいます。この報酬月額が「標準報酬月額」決定の基礎となるため、初めに「報酬月額」を計算する必要があります。

ここでいう「報酬(給与)」とは、労働基準法上の「賃金」とは定義が異なり、労働を提供した対価として受け取る物すべてが対象です。お金だけでなく現物支給される物も含みます。

報酬に含まれるもの報酬に含まれないもの
お金で支給されるもの
  • 基本給
  • 諸手当(残業手当、通勤手当など)
  • 賞与等(年4回以上支給のもの)
  • 病気見舞金、災害見舞金、慶弔費など
  • 退職金、解雇予告手当、株主配当金など
  • 出張旅費、交際費など
  • 年金、恩給、健康保険の傷病手当金、労災保険の休業補償給付など
  • 賞与等(年3回以下支給のもの)
現物で支給されるもの
  • 食事、食券など(※)
  • 社宅、独身寮など
  • 通勤定期券、回数券
  • 被服(勤務服でないもの)
  • 給与としての自社製品など
  • 食事(本人からの徴収金額が標準価額により算定した額の3分の2以上の場合)
  • 住宅(本人からの徴収金額が標準価額により算定した額以上の場合)
  • 被服(勤務服)

※定期券代などについては消費税も金額に含める
※現物支給は原則として時価で換算するが、食事と住宅については地方の物価に合わせて示された「標準価額」で換算する
※食費は本人の負担が標準価額の3分の2未満であれば、残りの額が報酬と認められる

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3.保険料額表を使って社会保険料を調べる

「標準報酬」が算出できたら、次は保険料額表を見て「標準報酬月額」と、それに対する社会保険料を調べます。

実際には"特定の時期"や"標準報酬額の大幅な変更等が生じた時"に、「標準報酬」の金額を日本年金機構に報告して「標準報酬月額」の決定または改定の手続きを行うことになります(後述)。手続きが完了すると「標準報酬月額」確定の通知が届きますので、その金額を元に保険料額表を見て社会保険料額を調べます。


<例:報酬月額が183,000円のケース

保険料額表(健康保険料の箇所を一部抜粋)
標準報酬報酬月額

(円以上〜円未満)
健康保険料
介護保険第2号被保険者
に該当しない場合(※)
等級月額
(@)
9.96% (A)
全額折半額
12150000146000 〜 155000149407470
13160000155000 〜 165000159367968
14170000165000 〜 175000169328466
15180000175000 〜 185000179288964
16190000185000 〜 195000189249462
17200000195000 〜 210000199209960

初めに「報酬月額」の列を見て、どこに該当するか確認します。
183,000円なので、下から三番目の「175000 〜 185000」の部分に該当します。よって、


  • 「等級」:15
  • 「標準報酬月額(@)」:180,000円
  • 「健康保険料(全額)」:17,928円
    → 会社が納付する金額
  • 「健康保険料(折半額)」:8,964円
    → 従業員の給与から天引きされる金額。健康保険料の半分は会社が負担

となります。小数点以下の金額がある場合は四捨五入します。

社会保険料の計算式に当てはめても同じ結果になるはずです。
計算式は「標準報酬月額(@) × 保険料率(A)」なので、

  • 180000 × 0.00996 = 17928

となります。厚生年金保険料も同じようにして表から確認できます。

※介護保険料について

保険料額表の健康保険料の箇所は「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」と「該当する場合」に分かれていて、それぞれ保険料と保険料率が異なります。
「第2号被保険者」とは40歳以上65歳未満の人です。40歳になると介護保険料の納付義務が生じます。介護保険料は健康保険料に上乗せされる形になっているため、被保険者に該当しない40歳未満の人よりも健康保険料率が2%前後高くなります。
65歳以上になると介護保険は健康保険と切り離され、原則として毎月の年金収入から天引きされる形に変わります。

◆保険料額表の改定と社会保険料の地域差

社会保険を管理・運営する公的機関「全国健康保険協会」は各都道府県に支部があります。支部ごとに独立して運営しているため保険料率は全国一律ではなく各都道府県ごとに決定されます。また毎年定期的に改定されます。
都道府県ごとの保険料率の違いや毎年の改定幅はわずかで、近年の数値を見ると健康保険の保険料率はおよそ10%前後(従業員の負担はその半分)、厚生年金の保険料率はおよそ18%前後で推移しています。

改定の時期は概ね毎年9月と3月です。直近の社会保険料を確認する際に、間違って古い保険料額表を参照しないよう注意しましょう。各都道府県の保険料額表は日本年金機構のホームページでも確認できます。


4.標準報酬月額の決定・改定時期

「標準報酬月額」決定の元となる「報酬月額」は毎月同じとは限りません。残業の多い月などは月額も大きくなります。
では毎月の給与額の増減に応じて標準報酬月額や社会保険料額も毎月変わるのかというと、そうではありません。

基本的に一度決定した標準報酬月額は次の改定時期まで変わらず、同じ金額を使って社会保険料を算出します。
標準報酬月額を決定・改定する時期は以下の4つです。


  1. 社会保険の資格を取得した時
  2. 入社時や雇用契約の変更などによって新規に被保険者の資格を取得した時に標準報酬月額が決定されます。

  3. 毎年7月(定時決定)
  4. 原則として7月1日現在の被保険者全員について、4月・5月・6月に支給した報酬の届出を行い、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額が決定されます。これを定時決定といいます。

  5. 給与額が大幅に変動した時(随時改定)
  6. 昇格、降格、給与形態の変更などによって固定的な給与の額が著しく変動した場合、具体的には保険料額表で2等級以上の変動が起きた場合にも標準報酬月額の改定を行わなければなりません。これを随時改定といいます。

  7. 育児休業などを終了後、給与が下がった時
  8. 職場に復帰した後、保育園の送迎などで就労時間が減り、以前より給与が下がった場合にも標準報酬月額の改定を行うことができます。こうした場合、厚生年金保険料が減額されても将来受け取る年金額が減らないようにする措置を受けられます。


それぞれの詳しい内容や計算方法、手続きの仕方等については別項で解説します。



5.社会保険料を計算する際に気をつけるポイント

毎月、社会保険料額のチェックを行う際には以下の点に気をつけましょう。



  • 報酬月額の内訳
    →報酬に含めてはいけないものが含まれていないか。または報酬に含めるべきものが除外されていないか

  • 6月の給与支給時
    →支給後に標準報酬月額の定時決定の手続きを行う

  • 固定的な賃金に大幅な変更が生じていないか
    →2等級以上の変更があれば、標準報酬月額の随時改定の手続きを行う

  • 最新の保険料額表および保険料率を使っているか
    →毎年9月と3月頃に改定される

  • 従業員の年齢
    →40歳以上になると介護保険の第2号被保険者となり、健康保険料率が変わる(上がる)。また、65歳以上になると介護保険が健康保険と切り離されて年金天引きとなるため、健康保険料率が変わる(下がる)。
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